「…また貴様か!」
…墓参りしているだけなのに、どうしてそんなに嫌な顔をするのかな、君は。今も昔も、君と僕は因縁の間柄、というわけか。
「ご挨拶だね。
故人の兄なら、弟の墓に参る人間に礼ぐらい言ってもいいだろうに。」
「貴様が『人』なら考えるがな。大体一度礼はしたはずだ。」
…やれやれ、やはり君は相変わらずか。
視線をずらしてジョミーの墓に目をやる。この墓はいつまで経っても供物が絶えることはない。花や菓子類はともかく、ノートやサッカーボールまであるのには驚いてしまう。
「先日からよくここに来ているが、墓参客が多いね。」
そして、墓参客の思いも色あせていないという事実にもびっくりする。それだけ彼らにとってジョミーの存在は大きかったということなのだろう。
「…ああ、あれの友人だろう。」
君もそんなジョミーを、今もあのときと変わらず悼んでいるんだね。気持ちは分かる。随分昔の出来事とは言いつつ、僕もそうだから。
「そうだね、皆そんな年代だ。
ジョミーは学校では有名人だったのか?」
「まあな。学校に限らず、近所でもサークルでも。」
「…変わらないね、そういうところは。」
その言葉に彼は興味をひかれたらしい。
「ほう?貴様の知っているジョミーはどんな奴だったんだ?」
「無茶、無謀、無計画。傍で見ていれば危なっかしくて仕方がなくてこっちがやきもきさせられるのは日常茶飯事、でもまったく憎めない。
それに仲間思いで、自分より他人を大事する、弱いものを守るためなら相手の力量も構わず向かっていく、無鉄砲で正義感が強くて一途な性格だった。」
「…なるほど、変わらないな。まったくあいつは…。」
そうだと思っていた。その表情からすると、さぞかし君も彼には気を揉んでいただろう。
「しかし、そのおかげでこんなにジョミーの死を悼んでもらえるんだから、それは彼の人徳なんだろうね。
昔もそうだったよ、彼の死に皆が涙した。」
…もっとも、僕自身は泣いてなどいなかったけれど。
「…貴様もご苦労なことだ。
そんな思いを何度すれば気が済む?俺は一度で十分だ。」
…君の弱音など初めて聞いた。ジョミーに聞かせてやりたいくらいだな。
「それでもいつか会えると思えば耐えられる。」
時間はたっぷりあるのだから。
すると、君はまた嫌味ったらしい表情に戻って。
「なるほどな、どうりで見るからに面の皮が厚そうなわけだ。」
そう言われたときには、同情するんじゃなかったと後悔した。
「…君だけには言われたくないね。」
それに、僕のどの辺がそう見えるのか、教えてもらいたいくらいだ。外見には気を遣っているつもりなんだけどね。
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