ソルジャー・ブルーが倒れたと聞いたのは、サイオンの訓練中だった。
訓練といっても、僕は教える側だったから、他の人にその役を代わってもらって慌てて青の間へ直行した。
青白い顔。
もともと肌の色が白いのに、さらに青さが加わって、ひどく儚げに見える。
口を開けば、まともなことひとつ言わないくせに、今はぐったりとして静かにベッドに横になっている。この人の本性は狸か狐かと思わせるいつもの老獪さはまったく感じられない。今にも消えてしまいそうな美貌に。
…つい、日ごろの恨み言が頭をよぎる。
だから、無理をするなといっているのに。
君はミュウの長なんだから、もう少し手を抜くところは手を抜いて。
君に何かあったら、皆悲しむだけじゃ済まないんだよ?
自覚なさすぎ!最長老のくせに!
いつも人には小うるさく言うのに。無茶をするなとかもっと考えろとか。
人に言う前に自分に言い聞かせろって言うんだ!この若作りのジジイ!!
「…ジョミー、分かったから少し思念を抑えてくれないか。」
「あれ?」
あまりに怒っていたせいか、思念波のセーブができなかったらしい。
「起きてたの?」
「君のテレパシーで起こされたよ。」
迷惑そうな顔でため息をついて、上半身を起こす。
「起きなくてもいいよ。」
倒れたくらいなんだから、寝てなきゃダメだろ?
そう言うと、じろりとこちらをにらむ。いつもなら凄みがあるんだけど、今日は具合が悪いせいかあまり感じない。
「最長老とかジジイとか、もう少し言い方はないのか。」
…ああ、そうだった。君はその花のかんばせが自慢だったんだよね。それで若作りしてるようなものだし。
「そのくらい言わないと、自覚しないでしょ。
もっと言ってあげようか?『年寄りの冷や水』、『老いの木登り』…。」
「…もう十分自覚したから、やめてくれ。」
本当ならここでやめてあげたいけど、君ならまたすぐに無理をしそうだから、もう少しいじめておこうと思ってしまう。
「ああ!君にぴったりのことわざがあった!」
それを聞くと、君は嫌そうな表情を浮かべて。
「…どうせろくなものじゃないだろう。」
「『老い木は曲がらぬ』!
年寄りになったら、もうその頑固なところ直しようがないだろ?」
言いながらふと見ると。
今度はため息をついてベッドに倒れこんでいた。
「…もういい、今日は寝ていることにする。」
「そうそう、やっぱり『老いては子に従え』だよ。」
これでよしっと。寝るのが一番の養生だからね。
でもどうやら、今の一言が余計だったらしく、またにらみつけられた。
「君は僕に元気になってほしいのか、そうじゃないのか?」
「もちろん、ソルジャーには元気でいてほしいよ。」
澄まして言うと、君は疑わしそうな視線を送ってくる。
「本当にそう思っているのか疑問だが。
尤も、僕に何かあれば、次のソルジャーは君だからね。」
「ええっ?何でそうなるんだよ!!」
「当然だろう。
じゃあ僕は寝る。君は訓練にでも戻りたまえ。」
子供のようにふて腐れる君を見て、おかしくなる。
でも、ブルー。
本当に心配しているんだよ?
君は変な指導者だけど、みんなのために命を投げ出すことすら厭わないのはよく分かっているから。
だから。
おやすみなさい、ゆっくり休んで。
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拍手連載!ブルーは変人だけど、ジョミーは天然。割れ鍋に綴じ蓋コンビかも!
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