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 「――――、一緒に遊ぼうよー!」
 子供たちが階下で手を振っている。
 『いいよ、今そっちに行く!』
 またいつもの夢。でも、今のところ、やはり彼はいないようだ。
 それにしても、『僕』を呼ぶ名前が聞き取れないのはなぜだろう。
 『僕』は2階の高さをものともせず、ひょいと飛び降りた。子供たちの歓声が、それをたたえる。
 「すごーい!」
 「――――は強いんだから当然さ!」
 「そうだよ、なんたってソルジャーの次に強いんだし!」
 …ソルジャー?
 『ソルジャーの次って…、まあそんなもんか。』
 子供たちのきらきらした目に、『僕』は反論できなかったようだ。最後の辺は苦笑いしながらのぼやきに近いものだったが。
 「――――が次のソルジャーなんだよね?」
 『え…?いや、違うって。』
 「えー?違うの?」
 「うそだあ。だって、大人たちがそう言ってたし。」
 『誰だよ、そんな根も葉もないこと言う奴。』
 それにしても。
 ソルジャーって何だろうと思っているが、ここではすでに一般用語らしく、誰も解説してくれない。どうやら人を指す言葉のようだとは分かった。
 しかも、今までの短い話を総合すると、ソルジャーとやらは子供たちには絶対の存在らしい。
 「あ、ソルジャー・ブルー!」
 また子供たちの歓声が上がる。見ると、あの人が苦笑いしながらこちらに歩いてくるところだった。
 その不可解な言葉が名前の上にくっついているということは。
 ソルジャーというのはどうやら敬称の一種であり、この人の職名のようなものであるらしい。
 『難しい話ならあとにして。僕、この子達と遊ぶ約束したから。』
 いかにも迷惑そうな『僕』の声。
 今この人に声をかけられて、何か具合の悪いことでもあるのだろうか。
 「それは残念だったな。先ほどの支離滅裂な報告の真意を聞こうと思ったのだが。」
 表情と声は穏やかなのだが、言葉にとげがある。
 やはり、『僕』は何かやらかしたようだ。
 『…じゃあ、なおさらあとにして。』
 「ソルジャー…、大事なお話なの…?」
 二人の穏やかならざる雰囲気に。
 子供たちが不安そうに問いかけると、この人は優しく微笑む。
 「大事には大事だけど、先約があるんじゃ仕方ない。大丈夫だよ、すぐにという話じゃないから。
 では、終わったらブリッジに来てくれ。」
 最後の言葉は、当然『僕』に言われたものだ。
 『このまま、もういいよってなことにはならないわけ?』
 「なるわけがない。」
 子供には優しいけど、『僕』には厳しい。
 去り際にあっさりと言われた否定の言葉に、『僕』はわざとらしくため息をついた。
 「――――、何か悪いことしたんでしょ。」
 あの人が行ってしまってから、女の子の一人が『僕』を非難がましい目で見て言う。
 『な、何でそういう話になるんだよ?』
 「だって、いつも優しいソルジャーが怒ってるから。」
 『だーかーら、どうしていきなり僕が悪くなるわけ?』
 「ソルジャーは絶対悪くないもん。」
 まわりの子供たちもうんうんとうなずいている。
 『ちょっと、それはひどいじゃないか。』
 「ソルジャーはひどいことなんてしないもん!」
 『相手が悪かったか…。』
 完全にあの人の味方になっている子供たちに、『僕』は苦くつぶやいた。
 
 
 
 
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        | 拍手連載!ブルーのほうが人望がある、というのは私の中ではデフォルトだったり…。 |   |