不思議な夢は続いていた。
客観的に見るに、あの人の言う『彼』の意識が何らかの理由で流れ込んできて見るらしい夢だということは、分かった。最初は戸惑っていたけれど、最近では面白くなってきて、夜になるたびに今日はまたあの夢を見るかなと楽しみに思うくらいだ。
ただ、それは『彼』の意識が見させるものなのか確証がないので、あの人には夢の話はしたことがなかったけれど。
「多分…、3、4千年くらいじゃないかと思う。」
「そんなに永く…?」
この人に、地球の生態系の復活を見守っていた期間を聞いたときの答えだ。千年の単位で答えてくるところがすごいが。
「でも、永くはないと思うよ。
地球の生態系がおおよそ50億年かかってできたことを考えれば、あれだけ破壊された環境をこの短期間にここまで回復できるとは、奇跡だと言ってもいいくらいだ。」
「地球の環境もそうですが、あなたのほうがすごいと思います。」
それをたった一人で見守っているなんて。
あなたの地球への愛情がそうさせたのか、それとも彼の遺言のためなのか。そのどちらでもいいけれど、この事実は賞賛に値する。
「すごいかもしれないけど、手放しに感心できないと思うよ。
言ってみれば、僕が地球に固執しすぎた結果であるわけだし、それに…。」
この人にしては珍しく言葉を止めてしまった。
「それに?」
促せば、少し苦い表情で応じる。
「ある意味僕が女々しいという証明でもあるわけだから。」
「そんなことはないですよ!」
女々しいだけではそこまでできないと思う。
「ありがとう。
でも、当時の僕には彼との約束以外、すがるものがなかったから。」
悲しそうに微笑むこの人に。
それがどういった状況だったのか、知りたかったけれど、結局訊くことができなかった。
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