ここへ入ってきたときから気がついていた。
君は相変わらず好奇心のかたまりで、向こう見ずなところは変わっていない。おまけにいたずら好きのようだし、ここでもさぞかしまわりを困らせているんだろう。
肝試し代わりに夜の博物館を一周なんて、いまどき誰もやらないと思うけどね。それに、もし見つかったら、君も君の友人もただでは済まないんじゃないかな…?
そう思って見ていたが、鍵の壊れた窓から入って、懐中電灯を片手に歩いて行くところは、本当に恐れを知らない冒険者のようで、つい笑ってしまった。
「おいっ、もっとゆっくり歩けってば!」
「何やってんだよ。置いてくよ、サム。」
「暗いから危ないだろっ。そんなに急ぐなって!聞いてんのか、ジョミー!」
「平気、平気。」
声がここまで聞こえてくる。
では、君の友人には悪いが、少しの間君と二人だけにしてもらおう。
「あれ?サム?」
後ろを振り返って首を傾げてからこちらを向いた君が固まる様子を見て、やっぱり、と思った。
『忘れてなかったら。』
予告どおり忘れているみたいだね。これだけ永い間会わなかったのだから、それも当然か。
「こんばんは。」
そう声をかけると、はたと我に返ったようで、今度は不思議そうに見返してくる。
「あの、警備の人、ですか…?」
…それはいくらなんでも無理があるんじゃないか…?
「いや。この場所が気に入って出入りしているただの一般人だよ。」
一般人、とは言えないかもしれないけど。
呆気に取られて僕を上から下まで見つめる君に不快感はないけれど、何かろくでもないことを言いそうだなと思っていると。
「もしかして、コスプレイヤーとか…?」
…さすがにそれはないだろう。
確かに、この時代にマントといういでたちは違和感があるだろうが、君からそんな言葉を聞こうとは。
「そう、見えるかな?」
「違うんですか?」
「少なくとも、何かに成り切って楽しんでいるわけじゃないんだけどね。」
苦笑をするしかあるまい。僕を覚えてない君に、何と言って説明しようか。君の疑問符だらけの視線を受けていると、ため息が出そうだ。
「そうだね。僕はずっと前に生きていたから、こういう時代錯誤な服装になっているんだよ。」
どうせ遅かれ早かれ分かることなら、さっさと教えておいたほうがいいだろう。
そう思ったのに、今度はさらに疑わしい視線になるのを見て、どうしたものかと困ってしまった。
…変な人とでも思っているのだろうか。
「ずっと前に生きてたって…、どういうことですか?」
「その言葉のとおりだよ。君が生まれるずっと前に、僕は存在していたんだ。」
「だって、あなたはここにいるじゃない…。
って、うわああああ!?」
さすがに驚いている。
君の伸ばした手が、何に触れることなく僕の身体を突き抜けたのだから、当然の反応だろう。
まさか、急に触れてくるとは思わなかったものだから、油断した。やはり君の行動は読めない。
でも君は、呆然としながらも、逃げ出す気配がない。普通だったら叫び声をあげて逃げていくだろうに。
「あの、ちょっと聞いてみますが…。」
訝しげにしながらも、こちらを伺ってくる君にほっとした。
今再会を祝うわけにはいかないようだけど、これだけ永く待っていたのだから、あと数十年待つくらいは平気だよ。
それだけあれば、思い出してくれるかもしれないしね。
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拍手連載!うわあ、今頃プロローグかい!!忘れていたんです、スミマセン〜!! |
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