「あなたに心配をかけるつもりじゃなかったんです」
申し訳なさそうに、ジョミーはうつむく。今のジョミーは以前となんら変わりない。そのことに安心して、ブルーは首を振った。
「いや、ジョミーのせいじゃない…」
君はきちんとテレパシーで理由を説明して、余計な心配をかけないように気を配ってくれた。それなのに、いても立ってもいられなくなって、ここまできてしまったのは自分自身なのだから…。
「それで…本当に大丈夫なのかい? 頭が痛いと言っていたが、どんな風に痛むんだい?」
その言葉には、ジョミーは顔を上げてにこりと笑った。
「だから、大丈夫ですってば。こうして横になっていただけで、何となく頭が軽くなったような気がしますし。でも」
「え…っ」
ジョミーが手を伸ばしてきて、ブルーの肩をとんと押す。何の準備もしていなかったブルーの身体は、ベッドの上にあおむけに倒れた。
「僕の頭痛は、何かの禁断症状なのかもしれないと思って。だって、それが証拠に」
あなたの顔を見た途端、治ったような気がしますし。
「じょ…み…!」
この体制では、ジョミーを押しのけることは不可能だ。ましてや、サイオンを発動させることは避けなければいけない。お互いタイプ・ブルー同士、サイオンがぶつかりあえば、大変なことになる。
「ジョミー、待て…!」
「こんなおいしい状況で待てると思うんですか?」
「おいしいって…! 君は昨日から変だ。頭を打ったショックで、どうかしたんじゃないのか!」
「あなたがそう思うのならどうかしたんでしょうね」
口元をつりあげて笑う様子に、ブルーは目を瞠った。
この子は…いつの間にこんな顔ができるようになったんだ…?
まだ子どもだとばかり思っていたジョミーの大人っぽい雰囲気に、ブルーは戸惑った。
「…あなたは僕の知っているあなたじゃないかもしれない。でも…」
ジョミーの手がブルーの頤に触れる。
「僕は、あなたに触れたい…」
「ジョミー…んっ」
そのままジョミーの唇が落ちてきて、ブルーのそれをふさいだ。強引に割り込む舌に、ブルーの腰がびくりと揺れた。
なぜ…っ? どうして…。
いつもとは逆。いつもは戸惑うジョミーを優しく、でも強引に抱く。けれど今はどうだ、ジョミーの情熱的な舌の動きだけに翻弄されてしまっている。
「…は…っ」
息が上がる。敏感にそれを察したジョミーが、ブルーの中心に触れてきた。びくりと身体がはねる。
「…なんだ、あなたも欲しがっているじゃないですか」
唇を解放し、顔を上げたジョミーがそっと耳元でささやく。その吐息さえ刺激となってしまい、ブルーは身体をぴくんと揺らした。
「ち…っ、違う! これは…っ」
『違うの、あなた。これは…!』
…いや、場面が違った…。
「これは…一体何が違うんですか? ここも元気なようだし?」
「はうっ!」
ジョミーは意地悪くブルーの立ち上がっている中心をなでた。途端に声が上がる。
「待て、待ってくれ…! これは違うんだ!」
「だから、何が違うんですか? ここをこんなにして」
そう言われると、ぐっと詰まる。だが、ブルーは精いっぱいの虚勢を張ってブルー自身に触れているジョミーの手を払った。
「い、いいから、この手を離したまえ!」
声がひっくりかえっている様子は、とてもいつもの威厳あるソルジャーとは思えないが、ブルーのあまりに必死な形相に、ジョミーは手を引っ込めた。ブルーは何とか起き上がり、ベッドの上を後ずさった。
「き、君はまだ頭を打ったときのダメージが残っているんだ! しばらくゆっくり休養したまえ!」
ブルーは上ずった声でジョミーを一喝してからベッドを降り、壁ぎわを出口に向かってじりじりとかに歩きを始めた。滑稽なことこの上ないが、本人は必死だ。
もうすぐ出口。だが、ジョミーがこちらにむけた目を伏せ、諦めたように微笑む姿に、動作が止まってしまった。
「そう…ですね。すみません」
悲しそうに目を伏せた姿。その沈鬱な表情に、身体が動かなくなった。
「早く、出て行ってください」
吐息のようなささやきに、ジョミーの傷ついた心が伝わってくる。
…そんな…君を傷つけようなんて、思ってなかったのに…。
「どうにも…あなたの顔を見ていると我慢できなくなる。だから早く」
こんなジョミーは…知らない。けれど…彼の打ちひしがれた姿に、むしろ困惑する。
「ジョミー…僕は…」
「行って、ください。あなたにひどいことをしてしまいそうだから…」
しかし、ジョミーは首を振ってかたくなにそう言った。
…ジョミー…。
それでも。
目の前にいるのは、紛いもなく僕の大切な太陽。その彼を悲しませるなんて…。ましてや、ジョミーは僕に拒まれて傷ついている…。
ブルーは戸惑いがちにジョミーに近づいた。ふ、と彼が顔を上げる。
「その…君の気持ちは分かる。僕が、今まで君にしてきたことだ。けれど…僕にとっては、あ…あまり経験がないから…」
「ブルー…?」
「その、優しく、してくれるなら…」
語尾を誤魔化しながらも、つぶやく。そんなブルーの様子に、ジョミーはきょとんとした後、嬉しそうに微笑んだ。
「…ホントに…いいの?」
「よくなかったら…こんなことは言わない」
言葉にするのには勇気が要ったが…口に出してしまえば楽になったような気がする。確かにいつもとは反対だけど、ジョミーが僕を求めてくれる。そんな喜びも…自分の中にあることだし。
わずかに頬に赤みが差したブルーに、ジョミーは優しく手を伸ばした。その手がブルーのうなじに触れる。
「…っ」
「ブルー…」
びくん、とブルーの身体が揺れる。まったく覚えがないとはいわないが…どうしても身体が硬くなってしまう。
「…愛して、います」
…なのに。その言葉に…力が抜ける。
所詮、自分はジョミーには甘いのだ。彼が望めば決してむげには出来ない。それなのについ腰が引けて…
つい笑いが漏れた。
「? 何がおかしいんですか?」
訝しげにジョミーが覗き込んでくる。
「…いや。なんでもない」
君のことが好きな自分に、呆れただけだよ。
そう、心の中でつぶやいて、自分もジョミーの肩に手をかけた。初めてここに来たときよりも高くなった身長。大きくなった肩幅。いつも身体をあわせているというのに、立場が逆転すると思うだけで、改めて君の変化を思い知らされるなんて…。
ジョミーの唇が自分のそれに重なる。甘いキスは、以前となんら変わらない。
「好き…」
優しいささやきも…変わらない。
「ジョミ…っ、んんっ」
腰に手を回され、逃げられないように固定される。そして、もう片方の手が、さわりとブルー自身を撫でる。びくりと揺れる、身体。
不思議な…気分…。いつもとは、逆なのに…。
「ブルー、ベッドへ…」
「あ…ああ…」
いつもの青の間の広いベッドではない。一般個室用の狭いベッド。それゆえいつもよりも寄り添っていなければいけない。
でも…それもいいかもしれないな。
ジョミーはブルーのシャツをはだけさせると、自らも上着を脱ぎ、たくましい胸板をさらした。この子はこんなにもたくましくなっていたのかと、場違いにも考えてしまう。
「…ブルー…」
ジョミーの手がブルーの身体に触れる。その次の展開を思い、心臓がどきんと鳴った。
「…?」
だが、ジョミーはそのまま止まってしまっている。見ると、じっとこちらを見つめた緑の瞳が笑っている。
「…ジョミー?」
不審に思って呼びかけてみると、ジョミーはにこっと笑った。
「あなたって、本当に綺麗だ」
…さらに、そんな気が抜けるようなことを告げてくる。
「つ、つまらないことを言ってないで…はぁっ!」
急にジョミーの唇が落ちてきて、ブルーの胸の飾りをついばむように刺激する。
「ま…待て、じょみ…っ」
いつもは逆なのに。それなのに、ジョミーの愛撫を喜んでいる自分がいる。こんな自分は初めてだ。それでも…心の中では戸惑いつつも、ジョミーの荒々しい行為に飲みこまれていく。
「や…あ…。はあ…」
下ばきを脱がされるときも…抵抗らしきものはできなかった。恥ずかしさに顔を覆ってしまったけれど、身体はされるがままになってジョミーを受け入れようとする。
特にジョミーが上手いというわけではない。それは過去の経験からよく分かる。けれど…やはり、自分はジョミーには無防備なのだろう、と…。
「は…あああっ!」
ぐい、とジョミー自身がブルーの中へ侵入してきた。お世辞にも、優しいとはいえない。未熟な、激しいだけの力強い動き。けれど…。
「はあっ、や…っ、ああん」
つい喘ぎが漏れる。身体もジョミーの動きに合わせて揺れる。ぐいぐいと強引に押し入ってくる、ジョミー。けれど、身体の軋みとは別に、とても気持ちイイ…。
「ん…っ、ブルー…!」
ジョミーの動きがさらに激しさを増す。彼の限界が近いことが分かる。
「ジョミー…ジョミー…!」
自らも腰を振りながら、ジョミーの動きに合わせて快楽を追う。
いつもとは逆だから…だろうか…? なんだか…とても新鮮なような…。
「ブルー…っ!」
「はあああっ!」
そして。
ふたりは同時に絶頂を迎えた。それっきり、部屋の中には忙しない息遣いだけとなり、静寂が訪れた。
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何となく新境地開拓!という気がしなくも…。このあとは、表に戻って語らいタイム~♪それからブルジョミバージョン行きます〜! |
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