|      記憶バンクの記録を見ながら、50年前に思いを馳せていたとき。「ソルジャー…?」
 その声にふと目をやれば、フィシスがゆっくりと歩いてくるところだった。
 「珍しいね、君が天体の間を出てくるなんて。」
 ふっと画面を消して立ち上がる。どちらにせよ、これ以上記憶バンクを見ていても仕方がない。
 「ごめんなさい、お邪魔をするつもりではなかったのです。」
 「邪魔だなんて思ってないよ。」
 そうですか、とフィシスは軽く頭を下げる。
 「以前、あなたに相談された泥棒さんのことですが。」
 「何かあったのか…?」
 「彼を占った結果です。」
 そう言って、フィシスは一枚のカードを差し出した。そこには、落雷により崩れる塔が描かれていた。
 「…これは…?」
 見ていて、あまり気持ちのよいカードではない。築いてきた何かが一瞬で崩れてしまうような、そんな不快感を抱かせる。
 「崩壊、事故、または誤解を意味します。正位置でも逆位置でもよい結果ではありません。」
 彼女の言葉で、まさに自分の考えの裏づけが取れたのだが…。それが、ジョミーの行く末を占った結果なのだろうか?
 「…それで、君の助言は?」
 そう言うと、フィシスは謎めいた微笑みを浮かべた。
 「お心のままに。」
 そういわれるのに、眉をひそめた。占いとは抽象的なもの、だけど、それでは意味が分からない。
 その疑問が表情に表れたのだろう、フィシスはくすっと笑った。
 「なりふり構っていられるときではありませんわ。私に申し上げられることはこれだけです。」
 
 …君がいなくなったという事実に青ざめて、あのときの彼女の言葉がふと頭をよぎった。
 僕は間に合うのだろうか、と。
 
 
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