|      『ジョミー・マーキス・シン。SD531年、育英都市アタラクシアの成人検査において、ミュウと断定』
 記憶バンクの文字の羅列を目でなぞる。
 ミュウである以上、どこにも痕跡を残さずにいられるはずはない。
 そう思って、記録が残されているだろうデータベースを片っ端から当たった。そのうち唯一ヒットしたのが、シャングリラの中央部に位置する記憶バンクだった。
 『その際に、テラズナンバー5は、サイオンレベルの測定機器の限界を上回るタイプ・ブルーの介入を受け、ジョミー・マーキス・シンの捕獲に失敗』
 多分、このタイプ・ブルーとは僕だろう。
 過去にも現在にも公式に認定されているタイプ・ブルーは僕だけだ。それもあまりありがたい話ではないが。
 しかし、記録はここまでで終わり。その後のことは何もない。
 これが、『Bandit of Jade』ことジョミーと思しきものの全データである、
 アタラクシアのマザーコンピューターに不正アクセスした結果はもっとひどいもので、『ジョミー・マーキス・シン』の存在した記録さえなかった。出生記録や在学記録、もちろん、養父母になった人物の経歴からも削除されている。ここまで徹底して記録を消す必要がどこにあったのか。
 しかも、この記録を消したのはおそらく…。
 そう考えていて、ふとそのデータの記録日を見て驚いた。
 …近い…。
 日にちまで覚えていないが、フィシスをユニヴァーサルから助け出したときと、同じような時期だったように思う。
 というよりも…。
 これは同日だった可能性がある…?
 少し考えて、フィシスの記録も呼び出してみて。
 …自分の考えが正しかったことの裏づけが取れた。
 しかし、今現在シャングリラにいるのはフィシスだけ。では、ジョミーは?ジョミーは一体どうなったんだ?
 彼の成人検査には僕らしきタイプ・ブルーの介入を受けたようだ。しかし、そのあとの記録はない。
 …もしかすると。
 ブルーは嫌な考えに形のいい眉をひそめた。
 記憶はないが…、僕は二人のうちどちらかを選ばざるを得なかったんじゃないだろうか…?
 
 
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        | アップするのを忘れてた…、というわけで、今更話のようですがのっけてみました!これも進まない話ですね…。(汗) |   |