「君はまた…!」
「こんにちは、キャプテン。」
屈託のない笑みを浮かべるジョミーに、ハーレイは一瞬見とれたようにぼうっとしてから、我に返ったように頭を振った。
ここは緑地エリアで、大抵子供たちの遊び場になっている。ジョミーはミュウの子供たちと一緒に遊んでいた。
「ここには来ないようにと何度も言っているだろう!」
ハーレイの怒鳴り声に子供たちも動作を止めて、不安そうに見守る。
「でも、ソルジャーのお許しはもらっているよー?」
一人がそう言えば、他の子供たちも口々に文句を言い出した。
「そうだよ、ソルジャーがいいって言ったもん!」
「キャプテンの意地悪!」
口々に子供たちが言うのに、さすがのハーレイも押され気味だった。
しかし、助け舟を出したのは意外にも…。
「じゃあ今日はここまでにしておこうよ。」
ジョミーはボールをそばにいる子供に返しながら、そう言った。
「えー?」
子供たちが不満そうな声を上げる。
「僕はキャプテンと大事な話があるから。
また来るからさ、今度は何して遊ぶか決めておいて。」
「話だと!?」
と、今度は勝手に話があると言われたハーレイのほうが不満そうだったが、とりあえず子供たちからこの泥棒を離すことができると思い直し、うなずいた。
「それで何の話だ?」
緑地帯から少し離れた廊下の突き当たり。
ブルーが見れば、珍しい組み合わせだというだろう。
「うん、キャプテンはソルジャーと付き合いは長いの?」
やはり思ったとおり、ソルジャー・ブルーのことを知りたいらしい。
「…急に何だ、泥棒の片棒は担ぐ気はないからな。」
釘は刺しておくことにした。
それでも、ハーレイとしてもこの泥棒が気になっていたところだから、話せる機会があるのはありがたかった。
「うーん、それとは離れて考えてもらいたいんだけどさ。」
一方、ジョミーと名乗った泥棒は、少し考えてからハーレイに向き直った。
「ソルジャーって、昔からあんなに変わった人なの?」
変わった人…?
確かにソルジャー・ブルーのような人はそうおるまい。というか、いたらすごい。
「変わった人とは失礼だろう!
そもそもその『変わった』指導者をかどわかそうとしているのは君のほうだろうが!」
「やっぱり昔から変わってるんだ。」
ハーレイの返事に、ジョミーは笑いながら舌を出す。
「誰もそんなことは言っていない!」
「まあまあ、ソルジャーには内緒にしておくからさ。」
ジョミーはおかしそうに人差し指を口の前に立てて笑う。そうしていると、まるで年端の行かぬいたずらっ子のようだ。
「…それで変わっていたとして、それがどうなんだ?」
決して同意したわけじゃないぞと暗に匂わせてから、ジョミーを促す。
「うん、ある意味すごいんだけど、あの人って自分を賭けの対象にする性格でしょ?」
「…そういう遊び心はある方だが…。」
「遊びじゃなくて本気で。」
「確かにそういうところもあるな…。」
「それって必ず勝つって思ってるの?」
「…それはそうだろう。」
「負けるような賭けはしないってこと?」
「そうではないと思うが。
あの方は、どんな状況でも自分の力で道を切り開いてきた人だ。どんな賭けであろうと、勝つつもりでいらっしゃるだけだろう。」
で、それがどうした?と聞いたが、ジョミーは気にかかることがあるらしく、ハーレイの質問はまったく耳に入ってこないらしい。
しかし、やがて顔を上げるとハーレイを正面から見つめた。『Bandit
of Jade』を名乗る泥棒の顔というより、ジョミーとしての素顔に見えた。
「…キャプテンはソルジャーが大切だよね?」
「当たり前だ。」
「じゃあ、せいぜい協力してあげて。僕に盗まれないようにね。」
余裕からくる警告、というよりも、心からの忠告に思えて、ハーレイは不審に思う。
「協力しろだと…?
そもそも盗まれないようにとはどういう意味だ?君がそんなことを言う立場ではないだろう。」
盗みに来ている張本人が。
「本音と建前っていうものがあってさ…。
ああ、この話ソルジャーには内緒にしといてね。」
「それは保障できんぞ。」
「そっか、ハーレイはソルジャーの味方だしね。
じゃあ、無理に内緒にしてとは言わない。」
そんなにあっさり言われると、むしろ違う疑問が湧く。
…今の台詞、むしろソルジャー・ブルーに伝えろと言うことか…?
黙りこんだハーレイに、ジョミーは苦笑する。
「そんなに難しく考えなくても。
じゃあ、できるだけ内緒にしてもらえる?言っちゃったらそれはそれでいいけど。深い意味は全然ないから、あまり気にしないで。」
気にしていると胃に穴が開くよ?
そう冗談半分に言われた言葉に、単にからかわれているだけかとがっくりと肩を落とすハーレイだった。
3へ
この話、3.5の間違いじゃ…?と思われた方!これは2.5でいいのです〜。ジョミーとハーレイの話を書いてみたかっただけのような気もするけど…。 |
|