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 「それで、何で本当のことを言わなかったんですか?」
 「本当のこと?」
 結局うちに戻ってママからお説教を食らったあと、ベッドに押し込まれて今に至っている。
 幸い熱は出ないようだったけれど、これじゃ明日も寝てなきゃいけないようで。
 
 『同情はできないよ。自業自得だと思ってあきらめて大人しく寝ているんだね。』
 この人って結構冷たいと思いかけて。
 そうだった、昔も笑顔できついことをずばずば言われてたなと思い出していた。
 
 「僕との約束って、地球を見守ることだけじゃなかったでしょ。」
 そうだね、と涼しい顔で同意しながらこの人は続ける。
 「君が先に言っていたとおり、僕のことはすっかり忘れていたようだし、その上何千年も前に死んだ君を待っていたなんて言うと、僕が変な人に思われるだろう。」
 …一理あるけど。
 「…それがなくても十分変な人ですけど…。」
 そう言うと、この人はしかめっ面を作った。
 「相変わらず失礼だね、君は。」
 どんな表情をしていても、絵になると言うのは、悔しいけどこの人だけだろう。
 「ところで僕も君にずっと聞きたいことがあったんだが、答えてくれるかい?」
 「何でしょうか…?」
 この数千年ずっと聞きたかったこと、と言われて、何だろうと身構えてしまう。
 「戻ってくると約束してくれたときのことなんだが。」
 「ああ…。」
 あの最後のとき。
 あのときが一番素直な気持ちで話をしたような気がする。
 「あれは本当に戻るつもりだったのか?それとも僕に付き合ってくれただけ?」
 …普通、そんなことを今更訊く?
 ていうか、あの状況は、ほかの人が見れば、何二人して馬鹿なことを言い合ってんだって場面だと思うけど。
 「本当に戻るつもりなわけ、ないでしょ?生き残る確率ゼロだったのに。」
 現実を見れば、あんな約束果たせるはずがない。
 そう思って、当然のことを言ったまでと思ったのに、この人は急に黙り込んでしまった。
 「…あなたは僕が本当に戻ってくると信じたんですか?」
 そう伺えば、この人ははあとため息をついて僕をまっすぐに見た。
 「…正直に言うと、信じてた。いや。」
 言葉を切って、しばらく考えてから。
 「信じたかった。君は生きて戻るために行ったのだと。状況さえ許せば、すぐにでも帰ってきてくれるものだと。」
 この人も、だったんだ…。
 戻って来いと言ったあれは、気休めに言ったわけでも何でもなかったのか。
 「…すみません、僕もです。」
 そう言うと、この人は目を見開いてまじまじと僕を見た。
 「僕も戻るつもりでいました。
 あのときは本当に死ぬ気がしなくて、本気で戻ってくるつもりでいましたから。結局、無理でしたけど。」
 「それなら、いい。」
 ほっとしたように笑顔を浮かべる。
 「君が希望を抱いて行ったのなら。」
 …ずっとそれを気にしていたのか、この人は。
 それなのに、この人と会って話すのがこんなに遅くなってしまって、悪かったと。このとき実感した。
 
 
 
 
 
   
      
        | 拍手連載!完結といいつつ、いろんなものが出てくる守護者。本当に完結したんかい…。 |   |