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   「最近よく夢を見るんだ…。」学校からの帰り道。
 幼馴染のスウェナと帰宅の途についていたとき、ついぽろりとこぼしてしまった。
 「ふうん…。
 目覚めの日が近いから、不安定になってるんじゃないの?ジョミーがナーバスなんて珍しいわね。」
 言いながら、くすっと笑う。
 今日は、サムは都合があって先に帰ってしまったが、いつもは3人で行動している。この中で一番早く14歳になる僕は、もうすぐ目覚めの日を迎え、大人になる。
 「それでどんな夢?」
 スウェナが聞いてくるのに、夢の内容を反芻する。
 「小さいころの夢。
 紅い綺麗な目をした人の夢なんだけど…。」
 それは、ずっと昔。僕がまだ5歳か6歳のころ。ママが買い物に出かけて、一人で留守番していたときの出来事。紅い目をした綺麗なあの人は、僕に笑いかけて話し相手になってくれて…。
 「それって…。
 ジョミーが昔指輪あげたって言う?」
 そう言われるのにどきっとした。
 「え…?何で知ってんの、スウェナ!?」
 慌てて問いかけるのに、彼女は逆に首を傾げた。
 「だってジョミー、昔言ってたじゃない。
 僕には婚約者がいるって!」
 「そんなこと言ってたっけ?」
 全然記憶にないんだけど?
 「そうよ、忘れちゃったの?
 幼稚園のころ、私がジョミーのお嫁さんになるって言ったら、ジョミーは僕には婚約者がいるからダメだって言ってたじゃない。しかもものすごい綺麗な人なんだよって。
 私、すごくショックだったからよく覚えてるわ。」
 「そっか、スウェナに言ってたのか…。」
 ほら、今ですらこんなに忘れてしまっている。
 それなのに、目覚めの日を迎えて大人になってしまったら…。もっと忘れてしまうのではないだろうかと不安で仕方がない。
 今はまだあの人の瞳を、顔を思い出すことができるが、服装や声は大分記憶が薄れてしまっている。
 それに…、大きくなったら迎えに来てくれるってあの人は言っていたけれど、それはいつなんだろう?来年?再来年…?それとも…。
 もう、来てくれないんだろうか…?
 
 
 
 
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