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  僕、メンバーズ・エリートに選抜されました。来週には地球へ行くことになりましたよ。興奮気味で連絡を寄越したシロエに、おめでとうとお祝いを言ってから、じゃあお祝い会を兼ねた歓迎会でもやろうかと誘った僕に、楽しみにしてますと、彼はいつもでない返事を返してきた。
 よほど地球へ来られることが嬉しいんだな。
 じゃあ、キースも誘って3人の同窓会もしようかというと、シロエが少し不機嫌そうになった。
 キース先輩が来るんですか?ま、ジョミーが誘うというなら反対はしませんけどね。
 相変わらず、素直じゃない。結構キースとは馬が合っているのに。
  「お前がメンバーズになれるとは、随分とメンバーズ・エリートの基準も下がったものだ。」「何とでも言ってください。僕今日は機嫌がいいんですから大抵のことは大目に見てあげますよ。」
 ジョミーは相変わらずのシロエのふてぶてしさに、おかしくなった。
 シロエは今日中央政府で辞令を受けて、正式に地球防衛軍の一員となった。階級は准尉。
 お祝い会といっても、いつ召集がかかるか分からないので、この地球防衛軍の中央局内にあるパブに集まって歓迎会も兼ねた飲み会を開いたところだった。
 「ふん、相変わらずだな。その口の減らないところなど特に。」
 キースもキースで内容のわりには口調が楽しげだ。
 「E-1077では、他に誰がメンバーズに?」
 「僕だけですよ、ジョミー。
 大体、メンバーズ選出は、各ステーションから1人か誰もいないかというのが通例だそうです。ジョミーのときが特別だっただけで。」
 ジョミーはキースとともに、メンバーズ・エリートに選ばれている。E-1077では歴代最初の複数選出だったそうだ。
 「ああ、そのせいで俺はしなくてもいい苦労を背負い込むことになったんだったな。」
 「なんだよそれ。」
 何が言いたいのかは見当がつくぞ。
 案の上、キースはいつもの決まり文句を口にした。
 「大体お前は問題を起こしすぎだ。俺がどれだけ気をもんでいるか分かっているのか。
 上官とは衝突するし、軍規は破るし、なぜかお前の当直の時ばかりやたらと海賊や反乱軍との小競り合いが多いし。しかも勝とうが負けようが、その被害は甚大だ。人的被害よりも物的被害が主なのが救いだが。」
 「小競り合いが多いのは僕のせいじゃないだろ!?大体負けたことなんかほとんどないし!!」
 単なる偶然まで僕のせいにされちゃかなわない。それってただの言いがかりだよ!
 「まあまあ、それがジョミーのいいところじゃないですか。」
 「そんなフォローにもならないようなことを言うなよ、シロエ!」
 つい叫んでしまったが、シロエはというとそんなことは意に介さず、懐かしそうに続けた。
 「ジョミー、ステーションのときと全然変わってないんですね、嬉しいですよ。
 当時も教官とは喧嘩する、機器類は破壊する、当時からダイナミックな人だなあと感心してましたから。」
 「…シロエ、僕が先輩だってこと、覚えてる?」
 ステーション時代のことは事実なので反論できない。
 仕方がないので代わりに先輩風を吹かせてみるのだが、シロエの表情からはほとんど効果はなさそうだった。
 「もちろん忘れてませんよ。ジョミーのほうが4年先輩だからこそ、丸々4年間会えなかったんですし。
 そもそもそれだけ問題を起こして、中尉まで昇進していることが驚きですよ。ジョミー、実力はあるんですけどね。」
 「まったくだ、才覚の無駄遣いだな。もったいない。」
 好き放題言う二人に、さすがにむかっとした。
 「何で僕の話になるんだよ!今日はシロエの歓迎会だろ!?」
 「僕はジョミーと会えただけで満足なんだから、いいんです。」
 「そうだ、こんな奴を歓迎するのも馬鹿馬鹿しいしな。」
 「僕もあなたに歓迎してもらおうとは思ってませんよ、キース先輩。
 その辺だけは気が合いますね。」
 ああもう、こいつらは…。
 いい加減にしろと言おうとして、シロエが顔を曇らせたことに気がついた。
 「…シロエ…?」
 「でも残念だな。僕の部署は二人となかなか会えない場所だから。」
 シロエの配属先は、地球の中でも周辺都市にあたるところである。決して新米メンバーズの配属先としては悪くなく、一般的なのだが、完全なる中央政府にいるキースとジョミーとは、すぐに会えるわけではない。
 しかし、表情を雲らせたのもつかの間、シロエはすぐに勝気な瞳を上げた。
 「でも、次の異動では必ずここに来ますからね。」
 「ほう、大した自信だな。ここ地球防衛軍中央局はメンバーズの中でも選りすぐりのものしか来ることができないぞ。」
 「だからですよ。僕はいずれあなたを追い抜くつもりなんですからね、キース先輩。
 ジョミーも待っててくださいね。」
 「できるものならやってみろ。」
 「シロエならすぐだよ。」
 キースとジョミーの正反対な返事が見事重なった。
 「なんだか二人とも対照的で笑えるな。
 ね、ジョミー。明日は忙しいですか?」
 「ん?別に。」
 「じゃあ久しぶりに射撃の練習に付き合ってくれませんか?もちろん、ジョミーの仕事が終わるまで待ってますから。」
 「いいけど。
 でもシロエ、ここを発つのはいつ?」
 「明後日です。だから、明日相手してもらいたいんですよ。
 ああ、キース先輩は少佐の仕事でお忙しいでしょうから、ジョミーだけでいいですよ。」
 「誰がお前の練習など見たいものか。
 せいぜいかつての射撃王に教えを請うことだな。」
 「ええ、そうしますよ。射撃王のジョミーに教わったほうが上達が早いですしね。」
 「それって嫌味かよ…。」
 射撃王とはステーション時代、射撃の腕のよい生徒に贈られた称号で、ジョミーも与えられたことはあるが、彼の場合もっぱら射撃の腕のみで成績が成り立っているという意味でつけられたようなものだった。
 「じゃ、よろしくお願いします、ジョミー。射撃練習場で待ってますから。」
 …何で二人ともそんなに意地ばってるんだか…。
 と考えたが、この二人はステーション時代からこんな関係だったなと思ってため息をついた。
 「ふん、中央の射撃訓練がどんなものか、ショックを受けないように心しておくんだな。」
 「ご忠告ありがとうございます。さぞかしキース先輩もショックを受けたんでしょうね。」
 「もう勝手にしてくれ…。」
 
 
 
 
      
        | 久しぶりにシロエ見たら書きたくなって…。うちのシロエはジョミーのこと大好きです。 |   |