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  「君はトォニィに『グランパ』と呼ばれているが。」「はい…?」
 「なんとも思わないのか?」
 「…どういうことでしょう?」
 ジョミーにはブルーの言わんとする意味が分からないらしい。
 そもそも、『グランパ』という呼称にまったく違和感のないジョミーには、なぜ突然そんなことをきかれるのかが分からない。
 「僕なら一気に老け込んだ気がするのだけどね。」
 そう言えば、ジョミーはああと納得したようにうなずいた。
 「あれは、僕がユウイとカリナ夫婦の生みの親のようなものだという説明を受けての呼び名なんですが。」
 それもちょっと強引な気がするが、何よりもトォニィがその呼び方を気に入って、全開の笑顔でジョミーを呼ぶのだから、それをどうこう言うこともないだろうと思っている。
 「それは分かっている。
 しかし、君がグランパなら、僕はどんな呼ばれ方をするのかと思うとちょっと頭痛がするんだが。」
 なるほど、そこに来るわけか。
 「そうですね…。」
 と、ジョミーはまじめな顔で考え込んだ。
 「あなたが僕の父親のような感覚なら、トォニィにとっては曾祖父ですね。グレート・グランドファーザー、僕と同様の呼び名だと、グレート・グランパですか。」
 「…君、少し意地が悪くなったんじゃないのかい?」
 あっさりと言うジョミーに、ブルーは不満そうにつぶやいた。
 「そんなことありませんよ。
 大体、あなたより年若いゼル機関長でさえ老師と呼ばれているんですから、呼び名ぐらいでこだわることないんじゃないですか?」
 「では君は、僕がゼル並みに年寄りの外見をしていてもいいというのか?」
 「ど、どうしてそうなるんです!?」
 さすがにその言葉には、ジョミーもうろたえた。
 「そう言ったも同然だろう。」
 「そんなことありません!大体どこからそんな発想が出てくるんです!?
 ああもう、そんなこと冗談でも言わないでください。想像しちゃったじゃないですか!僕はあなたのその綺麗な顔が好きなんですから!」
 ゼル機関長並みの老人外見のブルー…。
 想像もできないが、想像してしまったジョミーにはひたすらお気の毒、としか言えないと思う。
 「…なんだか引っかかる言い方だね。君が気に入ってるのは僕の顔だけかい?」
 「そうじゃなくて…!言い方が悪かったのなら謝ります。
 僕はあなたのその見栄っ張りなところや、自分の容姿さえ利用する老獪なところ、都合の悪いことは聞こえないふりをするところ、すべてひっくるめて好きなんですよ。」
 …一種の告白なのだろうが。
 どう聞いても愛の告白には程遠いと思うのは、気のせいではないと思う。
 「…君は僕に喧嘩でも売っているのか?」
 「そんなわけないじゃないですか!僕はどんなあなたでも大好きだと言いたいんですよ!」
 「そうは聞こえないけどね。」
 「聞こえなくてもそうなんです!!」
  最初の話はどこへやら。なんだか呼び名などどうでもよくなっている二人だった。 
     
 
 
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