「やはりお前か、ソルジャー・ブルー!」
その声に、ブルーが振り返る。
「生身でここまでやってくるとはな…。まさしく化け物だ。」
銃口をぴたりと合わせたまま、煽るように言うキースに。
「君は…、どこかで会ったか?」
ブルーは不思議そうに言った。
その途端、キースの頭の中は真っ白になってしまった。数日前、ミュウの船の中で人質をとって、脱走したときに対峙したはずだが。
この一件は、少なくともキースの中では鮮烈な印象を残した事件だった。目の前の秀麗な外見を持つ伝説のタイプ・ブルーとともに。
自称年寄りだから記憶力がないのか…?それとも…。
「会ってもいないのなら、軽々しく名前を呼んでほしくないものだな。」
ばっさりと切り捨てて、ブルーはそのままコントロールパネルに向かおうとした。
「会ったではないか、ミュウの船の格納庫で!」
わけの分からない焦燥感に駆られて、キースは慌てて叫んだ。
「私はお前に殺されそうになったのだぞ!!」
それを聞くと、ブルーは足を止め、少し考えた後にぽんと手を叩いた。
「ああ!女と子どもを盾に逃げた卑怯な野蛮人!しかも人質を解放するどころか自分が助かるために人質を爆弾で吹き飛ばそうとした、人間として最低な男。
そういえばあれは君だったか。」
卑怯だの野蛮だの。ブルーの使う形容詞にはまったく容赦がない。
「すまない、顔の印象が薄かったものだから、すっかり忘れていたな。」
さらに、追い討ちをかけるような言葉。それを涼しい顔と淡々とした口調でいうものだから、余計にショックが大きい。
そんなキースの内心を知ってか知らずか、ブルーはそれから、と続ける。
「私の呼び名はそれでかまわないが、一応訂正させてもらおう。ミュウのソルジャーは、ジョミー・マーキス・シンだ。私ではない。
以後覚えておきたまえ。」
「そ、そんなことはどうでもいい!」
そんな話など、どうだっていいではないか!人間として最低だの、印象が薄いだの、ここでお前を待っていた、私の立場はいったい…。
しかし、ブルーはそれをきくと形のよい眉をひそめた。
「どうでもいい?
君は自分が司令官であるにもかかわらず、ヒラ兵士と勘違いされて我慢できるのか?」
「今の場合は逆だろうが!」
「同じことだ。ソルジャー・シンはわれわれの大切な指導者なのだから。
それで、わざわざ声をかけたということは、何か私に用があるのか?」
よ、用…?
そこで本来の目的をはたと思い出す。
「も、もうメギドは止められんぞ!」
しかしブルーは冷笑を浮かべた。
「よく見たまえ。すでに止まっている。」
「なんだと…!?」
そんなはずは…!
慌ててパネルに目を移す。しかし、規則正しく点滅を繰り返すコントロールパネルは、先ほどと同じようにカウントを続けている。止まった様子はまったく見受けられない。
どういうことだ…?
「…やれやれ。
こんな手に引っかかるとは、メンバーズ・エリートもたいしたことはない。」
あきれ返ったブルーの声が聞こえた。
慌てて視線を戻そうとしたときには、制御機器がコントロールパネルごと轟音を発して爆発するところだった。
当然、その破壊の主は…。
「ソルジャー・ブルー!貴様!!」
今の爆発などものともせず、先ほどと変わらず静かに佇んでいた。
「油断したのは君だろう。
そもそもこんな初歩的な作戦に引っかかるとは、地球防衛軍のレベルも落ちたものだな。」
だから、そんな容赦のない台詞をそういう涼しい顔でさらっと言われても…!
「さて、もう用がないのなら私は帰るとしよう。
ああそうだ。メギドはいずれ自爆する。君もメギドの爆発に巻き込まれたくなければ早々に逃げることだ。」
「待て!」
止める間もなく、ブルーの姿はふっと消えた。
「もっと他に言うことはないのか、ソルジャー・ブルー―――!!」
ちょっとした意趣返しだったのだが。
…少しイジメすぎたか…?
ブルーに体力が残っていればこのくらいはやってるんじゃないかな〜、なんて妄想デス。 |
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